Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
Lesen Sie 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 337.181 Zeichen · 676 Bildschirme
立つ鳥の記
越え行く川
汗は袷の裏をとおして、古い書物の汚れみたいに、茶無地の表に、白い斑を描いていた。
村松三太夫は、父の背中をながめて、その汗塩から後光が映していると思った。六十歳の老体からこれ程な汗をしぼらせているものは何かと考えると、眼がしらが熱くなってくる。
『――父上、書写山が見えます』
『うむ。見える』
峠の上りでは、だいぶ喘いだが、下り坂にかかると、老体の喜兵衛は若い三太夫を常に背後において、急いでいた。たとえ父子のなかでも、この通りに、負けず嫌いなのだ。
いま越えて来た鷹取峠の上には、姫路藩の兵が、四百人ほど屯していて、戦時のように関を備えたり、槍や銃をならべて往来を威嚇していたが、その中を通って来るのでも、悠々と、そこらの兵を睥睨して、頭を一つ下げるではなく、
『江戸常詰の家中村松喜兵衛、同苗三太夫』
と一言、名乗り捨てて手を振って来たものであった。
相当な身分らしい物具を着けた、姫路藩の将が、
『江戸から御帰国でござったか』
と、長途のつかれを劬わるように、声をかけたのに対しても、
『されば』
膠なく挨拶して、
『御出兵とお見うけするが、とかく近所に事なかれと申すとおり、各※(二の字点、1-2-22)にも御苦労に存ずる。