Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

Lesen Sie 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 337.181 Zeichen · 676 Bildschirme

Aozora Bunko

石は喋る

『清水――』

と、後を見た。

一学は、路傍の井戸で絞って来た手拭で、胸毛を拭きながら、追いついて来た。

『しばらく田舎にいたせいか、ばかに暑さがこたえる』

『今日は、わけても酷しい。――所で、この儘、千坂様の所へ行くか』

『お待ちかねだろう』

『だが両名共、この汗くさい体では』

『かまうまい、身ぎれいにして、のろりと参上するより、今着きましたと云ってまいれば、お心もちが違う』

『では――』

と、高輪街道を真っ直に向けていた足を回らして、伊皿子坂へ上りかけると、角の石屋の仕事場から鑿に弾かれた石の粉が飛んで来た。

四、五人の石屋職人がわき目もふらずに働いている。その中で、一人の職人はもう碑に成った石の面に、チコチコと鑿を入れていた。

ふと、一学は、その前に足を止めた。

『…………』

丈八も、じっと、職人の彫る文字を見つめてしまった。立派な碑だと心のうちで思う。職人の仕事ぶりを見てもただの石碑を彫っているとは違って見える。

冷光院殿前朝散太夫吹毛玄和大居士

逆さにこう読める文字を二人とも不思議な気持で見入っているのだった。いう迄もなく、これは浅野内匠頭のやがて墓標となるものである。