Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
Lesen Sie 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 337.181 Zeichen · 676 Bildschirme
『め、めっそうもない』
『これでも』
と、その頭に、唾を吐いた。
内蔵助は、醒めた顔へ、手をやって、
『御用捨を。……この通りでござる』
両手をつくと、朱鞘の男は、大口を開いて笑った。――そして激しい語気で、
『ざまはない!』
と罵って、附近にたたずんでいた人影へ向い、ちらと、眼合図をして大股にかくれてしまった。
――不思議なほど、内蔵助は、澄んでいる心であった。惨とした面を――みだれ髪の毛を――大地に伏せてはいるけれど、心のうちには、何か寛々としたものがあった。自でに可笑しくさえなる余裕があった。
で――今の勤番者が、千坂の間諜であることもよく見え透いていた。辻咄の徳西だの、木村丈八などという曲者が、そこらで、自分のことばや挙動を見ているなという程のことも察せられた。
『大夫』
すぐ走り寄って来たのは、先刻、別れたと敵に見せた富森助右衛門と、十内老人である。
助右は、内蔵助のうしろへ廻って、土を払った。十内は、彼の泥の手を押しいただき、
『御忍苦、お察し仕ります』
涙ぐんで云った。
『なんの……まだ殿様へ御奉公の身、これしきのお勤め』
初めて、内蔵助らしく平調なことばが洩れた。