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Japanische Klassiker mit Furigana

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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(一)

岡本 綺堂

Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.540 Zeichen · 319 Bildschirme

Aozora Bunko

二

どこかで四ツ(午後十時)の鐘がひびいた。幽霊のような女たちは足音もせずに再びそっと消えてしまった。

その晩がおそろしかった。

二

神経のふるえているお蝶はとても安々と寝つかれる筈はなかった。生まれてから一度も寝たことのない衾や蒲団の柔か味が、却ってかれに異様の肌障りをあたえて、ふわふわと宙に浮いているような一種の不安を感じさせた。おまけに其の晩は蒸し暑かったので、かれの額や首筋には粘るような気味の悪い汗がにじみ出した。お蝶は長い紅い総のついている枕のうえに、幾たびか重い頭の置きどこを取り替えてみた。

そのあいだに何刻ほど経ったか。かれは固より記憶していなかったが、唯さえ静かな家中がしんとして、夜ももう余ほど更けているらしいと思う頃に、次の間の畳を滑るような足音が微かに響いた。お蝶は惣身の血が一度に凍るように感じられて、あわてて衾を深くかぶって枕の上に俯伏してしまうと、墨塗りの縁をつけた大きい襖がさらりとあいたらしく思われて、着物の裾を永く曳いているような響きが枕に薄く伝わった。お蝶は息をのみ込んでいた。

はいって来たものは薄暗い行燈の傍にすうと立って、白い蚊帳越しにお蝶の寝顔を覗いているらしかった。