Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.540 Zeichen · 319 Bildschirme
お蝶はやはり眠られなかった。夜もだんだんに更けて来たと思われる頃になると、自然か、人の仕業か、枕もとの行燈がしだいにうす暗くなって来たので、お蝶は眼をかすかに明いてそっと窺うと、白い襖から抜け出して来たような一種の白い影が、白い蚊帳のそとをまぼろしのように立ち迷っていた。
「あ、幽霊……」と、お蝶は慌てて衾をかぶってしまった。そうして、ふだんから信仰する観音様や水天宮様を口のうちで一心に念じていた。小半刻も経ってから彼女は怖々のぞいて見ると、白いまぼろしはいつか消えていて、どこかで一番鶏の鳴く声がきこえた。
夜があけると、すべてきのうの通りに、顔を洗って、髪をあげて、化粧をして、あさ飯が済むと庭へ連れ出された。夜になると、机のまえに坐らせられて、蚊帳にはいると、今夜も幽霊のようなものが枕もとへ迷って来た。そうした窮屈と恐怖とに夜も昼も責められて、それが七日八日とつづくうちにお蝶は自分が幽霊のように痩せ衰えて来た。
「こんな苦しみをするくらいならば、いっそ死んだほうがましだ」
彼女はしまいにはこう覚悟して、このあいだの女にむかって是非一度は家へ帰してくれと泣いて頼んだ。