Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.540 Zeichen · 319 Bildschirme
一度は手ひどく突き退けたが、二度目には帯を取られた。ゆるんだ帯がずるずると解けてゆくので、お倉は少しあわてた。彼女は大きい声で人を呼んだ。婆さんも皺枯れ声をあげて救いを叫んだ。その声を聞き付けて、町内の者が駈けてくる足音に、怪しい物の方でも慌てたらしく、かれはお倉の右の頬を引っ掻いて逃げた。お倉は二、三間追っ掛けて行ったが、足の早い彼はどこへか姿を隠してしまった。
「化け物なんて嘘です。たしかに人間ですよ。暗くって判りませんでしたけれど、何でも十六七ぐらいの男でした」と、お倉は云った。気丈な彼女の証言によって、化け物の正体はいよいよ人間ときめられたが、さてそれが何者であるかは判らなかった。
併し人間ときまれば又それを取り押える方法もあると、町役人どもは自身番に集まって、その悪戯者を狩り出す相談をしていると、ここへ又新しい不思議な報告が来た。それはお倉が曲者に出会ってから半時ほどの後であった。さきに干物を攫われた印判屋の台所の上で、なにかごとごとという音がきこえたので、おおかた猫か鼠だろうと思った女房は、台所へ出てしっしっと追ったが、屋根のうえの物音はまだ止まなかった。