Japanische Klassiker mit Furigana
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えいじつしょうひん
永日小品
Lesen Sie 永日小品 (えいじつしょうひん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.000 Zeichen · 100 Bildschirme
その眼つきは、いつでも庭の植込を見ているが、彼れはおそらく木の葉も、幹の形も意識していなかったのだろう。青味がかった黄色い瞳子を、ぼんやり一と所に落ちつけているのみである。彼れが家の小供から存在を認められぬように、自分でも、世の中の存在を判然と認めていなかったらしい。
それでも時々は用があると見えて、外へ出て行く事がある。するといつでも近所の三毛猫から追かけられる。そうして、怖いものだから、縁側を飛び上がって、立て切ってある障子を突き破って、囲炉裏の傍まで逃げ込んで来る。家のものが、彼れの存在に気がつくのはこの時だけである。彼れもこの時に限って、自分が生きている事実を、満足に自覚するのだろう。
これが度重なるにつれて、猫の長い尻尾の毛がだんだん抜けて来た。始めはところどころがぽくぽく穴のように落ち込んで見えたが、後には赤肌に脱け広がって、見るも気の毒なほどにだらりと垂れていた。彼れは万事に疲れ果てた、体躯を圧し曲げて、しきりに痛い局部を舐め出した。
おい猫がどうかしたようだなと云うと、そうですね、やっぱり年を取ったせいでしょうと、妻は至極冷淡である。