Japanische Klassiker mit Furigana
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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
Lesen Sie 猟奇の果 (りょうきのはて) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 134.971 Zeichen · 270 Bildschirme
火鉢にかけた銀瓶がたぎって、白い湯気が壁紙の模様をぼかしていた。
「君、どんな奇態なものを見ても、声を立てて相手に悟られる様なことをしてはいけないよ。それ丈けは注意してくれ給えね」
青木は万一を気遣って、繰返し念を押した。品川は聞えるか聞えぬ程の声で、ウンウンと肯いていた。
暫くすると、例の縄梯子を上る音がミシリミシリ聞えて来た。
男か女か。……青木は呼吸をやめたい程の気持で、身動きもせず待ち構えた。心臓の鼓動が非常にやかましく耳につく。品川もそれを察して、墨の様な闇の中で、一層身をかたくした。
視野に現われたのは、見覚えのある婦人だ。三十余りの大柄なよく発達した肉体だ。黒っぽい金紗の衣類がネットリと纏いついている。艶々と豊かな洋髪の下に、長い目、低い鼻、テラテラと光った厚い唇、と云って決して醜婦ではない。どこかしら異常な魅力のある顔だ。酔っているらしく、相好がだらしなくくずれている。
彼女はそこへベッタリ坐ると、この寒いのに、火鉢に手を翳そうともせず、「オオ熱い」と独言を云って、指環の光る両手でベタベタと頬を叩いている。
青木は疲れて来ると、穴から目を離して腰を伸ばすのだが、何の変化もないと知りながら、じき又元の姿勢に復らないではいられぬ。