Japanische Klassiker mit Furigana
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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
Lesen Sie 猟奇の果 (りょうきのはて) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 134.971 Zeichen · 270 Bildschirme
奇蹟が御入用じゃなかったんですか」
「奇蹟って、なんです」
相手がストリート・ボーイではないと分って、安心したけれど、彼の話すことがまるで理解出来なかった。併し、気違いではなさそうだ。
「奇蹟をお尋ねなさるのですか。じゃ、あなたは御入用がないのです。本当に欲しいお方はそんな風にはおっしゃいませんから、さようなら」
青年はフラフラと、又元の浮浪者共の間へ戻って行った。
浅草の様な盛り場には、時々こんな不思議がある。浅草は東京という都会の皮膚に開いた毒々しい腫物の花だからだ。そこには常態でない凡てのものが、ウジャウジャとたかっている。だが、愛之助はまだ一度も、こんな変てこな男に出逢ったことはなかった。美しいけれど妙に不気味なお能の面の様な顔が、いつまでも忘れ難く目の底に残っていた。
この青年は何者であったか、ただ意味もなくここへ現われて消えてしまう人物ではない。この物語の後段に至って、彼はもう一度読者の前に姿を見せる筈だ。その時こそ、彼の所謂奇蹟が何を意味するか、ハッキリ読者に分るであろう。
愛之助は何故ということもなく怖くなって、藤棚の下を出た。そして、当てもなく明るい活動街の方へ歩いて行った。