Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
だから旅館も、母屋は奈良県、奥の別館は、和歌山県だ。ぼくらは、奈良県の間で弁当をつかう。
あつらえたとろろ汁、まにあわず、下のプロペラ船が、「出るようっ」と、呼んでいる。あわててまた駈け下りる。上瀞巡り往復三十分。絶景に飽く。
あたまの中に、へんな印象が一つ残った。どこかの岸に無尽会社の広告が立っていたことだ。また乗客のはなしでは、ここ数里にわたる北山峡一帯をダムとする県議案も進捗しているとか。そうなると、いまの旅館あたりが湖畔となり、未開の風景がまた天上から降りてくることになる。自然も所詮は、その生態を科学と合致させなければならない時代に来ているらしい。
宮井でのりかえ、べつなプロペラ船で、本宮村へ溯る。着いたのが、もう夕方に近い。「ここが本宮か?」と、寒さにふるえながら村道の辻に立つ。あらためて思うほど、四顧、むかしを偲ぶ何ものもない。まったくの山村である。ただ、バスの待合所の前で、ぼくらを、もの珍らに見ている村の子どもたちの中に、ぼくはこの地にかつて平安朝の無数の都人やら、白河、鳥羽の諸帝がいくたびも行幸された世代の“昔の顔”を一つ見つけ出した。