Japanische Klassiker mit Furigana
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せいあどうきだん
青蛙堂鬼談
岡本 綺堂
Lesen Sie 青蛙堂鬼談 (せいあどうきだん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 121.438 Zeichen · 238 Bildschirme
」
それには答えないで、彼は無言で右の手を僕のまえにつき出した。薄暗いなかで透かしてみると、その人差指と中指とに生血がにじみ出しているらしかった。木の枝にでも突っかけて怪我をしたのだろうと察したので、僕は袂をさぐって原稿紙の反古を出した。
「まあ、ともかくもこれで押さえておいて、早く宿へ来たまえよ。」
彼はやはりなんにも言わないで、僕の手からその原稿紙を受取って、自分の右の手の甲を掩ったかと思うと、またそのまますたすたあるき出した。あと戻りをするのではなく、どこまでも山の上を目ざして登るらしい。僕はおどろいてまた呼び止めた。
「おい、君。これから山へ登ってどうするんだ。山へはあした案内する。きょうはもう帰る方がいいよ。途中で暗くなったら大変だ。」
こんな注意を耳にもかけないように、赤座は強情に登ってゆく。僕はいよいよ不安になって、幾たびか呼び返しながらそのあとを追って行った。八月以来ここらの山路には歩き馴れているので、僕もかなりに足が早いつもりであるが、彼の歩みはさらに早い。わずかのうちに二間離れ、三間離れてゆくので、僕は息を切って登っても、なかなか追い付けそうもない。