Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme
療養所へは、そう断つとけばいゝのよ」
と、切り出した。
「僕も、そのつもりでいるんですが、今からすぐでもいゝですか。車は待たしてあるんです」
で、一旦、療養所へ帰ると、小萩は、すぐに手続きをすませ、支度をとゝのえて、待つている車に乗つた。
こうして、京野等志と並んで自動車へ乗ることなど、そもそも、今までには一度もなかつたことである。おまけに、その車は、揺れほうだいに揺れ、二人の肩と肩とは、もみ合えるだけもみあつた。彼女のまだ不安定なからだが、自然に、彼の腕のなかで支えられることになつても、それは、いたしかたがない。そういう運命に、たゞ、逆らう意志のないことが、二人を共通の幸福感にひたらせたにすぎないのである。
「車がバカバカしく揺れるつてことが、こんなに苦にならないものだ、とは、今までつい知らなかつた」
と、京野等志は、真顔で、告白してみせると、
「このまゝ、谷底へ落つこつてもいゝわ」
と、小萩が、もう、夢みるように囁く。
思えば、三十分にあまる天下最悪の道は、相寄る二つの生命に、かけがえのない祝福を与えた結果になつた。
二
物事はつねに順序をたてゝ運ぶものではない。