Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme
「いゝですよ。僕は寝るところさえありやいゝ。どうせ、じつとしてはいないんですから……」
「何か仕事のあてでもあるのか」
と、父が口を出す。
「えゝ、まあ、なんとかするつもりです」
「そう急がんでえゝ。これで、終戦まではどうなるもんかと思つたが、近頃、どうやら、芽が出て来たよ。暮し向きのことは当分心配せんでええ」
「そんなに景気がいゝんですか」
「いや、それほどでもないがね」
すると、母が、
「なんでも、粉の方が当つたらしいんでね」
「コナ?」
「製粉……ウドン粉を作る会社よ」
と、母は、やゝ得意らしく説明する。
なるほど、そう言われれば、さつき玄関から座敷へ通る間にも、なにかほつとしたものを感じた。それは、ゆたかさとまではいかぬにしても、思いがけぬ見た眼のゆとりが、住居の空気に漂つていることを、彼は異様にさえ思つたのである。時節柄というハンディ・キャップもあるにはあつた。先ず新調と覚しい家具置物、張り替えて間もない畳、唐紙、そして、火鉢には盛りあがるような炭火。彼の記憶では、わが家にしては例のなかつたことである。
「あゝ、兄さん、僕は、兄さんさえよけれや、一緒の部屋でもいゝよ。