Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme
最後にくれた絵はがきは、多分、仏印からかと思うが……」
「えゝ、サイゴンから一度、ハノイから一度です。華中から、マレイ作戦に加わつて、それから、ビルマの飛行基地にやられたと思うと、すぐ仏印へ呼びもどされ、それからずつと、ハノイの基地にいました」
「怪我も病気もしなかつたの」
と、母がたずねる。
「基地で味方の不時着機に刎ね飛ばされたぐらいのもんです。背中を十針ばかり縫いましたが……」
「そんなことですめばいゝさ。内地にいたつて広島みたいなこともある。わしの同僚で、一人、原爆の犠牲になつた奴がいるが、生き死になんていうもんは、こりや天命さ。戦争そのものの不幸は、誰それ個人の上に落ちて来るんじやない。右を向いても左を向いても、罪のない人間が苦しみに喘いでいる。その惨憺たる状態を指すんだ」
父のこの言葉に、誰も、なんの反応を示さず、末の妹真喜だけが、兄の深志と眼くばせをして、首をちゞめたぐらい、その拍子に、
「そういえば、兄さんのお部屋はどこにするかね。お留守中に深志が占領しちまつたんでしよう。お父さんのお部屋を明けていたゞきましようか」
と、母は、いきなり、父の方へ向き直つた。