Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme
と、母が言つた。
「それじや、僕もあとにするよ。腹がへつたにやへつたけれど……」
「兄さんは、かまわないのよ。それに疲れてるだろうから……」
母がさつさと飯をよそおうとするのを、彼はもう止める気はしなかつた。父よりも先へ女たちが食事をしない習慣が、まだこの家に残つていたのかと、彼はちよつと意外に思い、それが愛情とか礼儀とかの問題ではなく、家長のおのずからな圧力がそこに示されているもののように感ぜられた。
が、彼が箸をとりあげると間もなく、父が帰つて来た。
「おや、早かつたんだなあ。どうだ、信州旅行は?」
と、父は着物を着かえながら、彼に言葉をかけた。
「別にどうつてこともないです。お先へはじめてますよ」
「さあ、さあ。あ、わし、たつた今、すしを御馳走になつたもんだから、腹はすいとらん。熱い番茶をいれてくれ」
「あら、でも、今日はあなたのお好きな湯豆腐ですのよ」
と、母が言うのを、
「いや、いや、なんであろうと、欲しくない。今日は風呂はあるのか、風呂は?」
長火鉢の前にあぐらをかいた父は、そういつて女たちをねめまわした。
「今日はあいにく沸しませんでした。薪を割るのがつい億劫で……」