Japanische Klassiker mit Furigana
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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
Lesen Sie 古寺巡礼 (こじじゅんれい) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.765 Zeichen · 285 Bildschirme
遷都騒ぎがあって大宮人がぞろぞろと北の方へ行ってしまう。近江では大銅像の鋳造などがはじめられている。古き都は「道の芝草長く生い」世の中の無常を思わせるほどに荒れて行く。そうかと思うとまた大宮人がぞろぞろ奈良へ帰ってくる。そうして大仏の原型などを造るので大騒ぎがはじまる。何千という大工や金工や人足がいそがしそうに働きはじめる。毎日毎日奈良坂の方に材木や銅塊などを運ぶ人の影が見える。足場には土がもられ、その上には鋳銅のすさまじい焔がひらめいている。それが幾年か続く。やがて供養の日になると一万五千の灯で東大寺一円の森の上が赤くなる。歌唄讃頌する数千の沙門の声が遠雷のように大きくうねって聞こえてくる。――東の方が少し静かになって来たかと思うと、今度はまた西の方で唐招提寺や西大寺や西隆寺などの造営がはじまる。奈良遷都の際すでに四十八箇寺あったという奈良の寺々は、このころはもう倍にはなっていたであろう。いかにも仏教の都らしい寺の多さである。
都を取り巻く諸寺の梵鐘が一時にとどろき出た情景を想像してみる。我々は正午に工場の汽笛が斉鳴する感じを知っているが、あれを音波の長い鐘の音に置き換えるとどんな心持ちのものになるだろう。