Japanische Klassiker mit Furigana
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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
Lesen Sie 古寺巡礼 (こじじゅんれい) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.765 Zeichen · 285 Bildschirme
水の音がしきりに聞こえて、いかにも幽邃な趣がある。あれこそ寺だろうと思っていると、それは水車屋だった。山の下からながめた時はるか絶頂の近くに見えた家がどうもこれらしい。もうそんなに高くのぼったかと思う。と同時に、一体どこまで昇ればいいのだろうと思う。やがてべら棒に大きな岩が道傍の崖からハミ出ている所をダラダラとのぼって行くと、急に前が開けて、水田にもなるらしい麦畑のある平地へ出た。村がある、森がある、小山がある。こんな山の上にあるだろうとは思いがけない、いかにも長閑な農村の光景である。浄瑠璃寺はこの村の一隅に、この村の寺らしく納まっていた。これも予想外だった。しかし何とも言えぬ平和ないい心持ちだった。こんなふうで、もう奈良坂まで帰っていていい時刻に、やっと浄瑠璃寺へついたのである。
さてこの山村の麦畑の間に立って、寺の小さい門や白い壁やその上からのぞいている松の木などの野趣に充ちた風情をながめた時に、わたくしはそれを前にも見たというような気持ちに襲われた。門をはいって最初に目についたのは、本堂と塔との間にある寂しい池の、水の色と葦の若芽の色とであったが、その奇妙に澄んだ、濃い、冷たい色の調子も、(それが今初めて気づいた珍しいものであったにもかかわらず)初めてだという気はしなかった。