Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけのつじ
夜明けの辻
山本 周五郎
Lesen Sie 夜明けの辻 (よあけのつじ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.801 Zeichen · 86 Bildschirme
亡き主人伊右衛門がそんな趣味のある人で、よく旅絵師などを呼んでは、いろいろなものを描かせて悦んでいた。
――わしは格式のある絵は好かぬ、絵は心だ、下手でもよい、その人の心の表れている絵なら、どんな安絵師のものでも珍重する。
よくそう云っていたのを知っている。この屏風もそうした旅絵師の一人の描いたもので、南画風の山水に北宋風の花鳥を配し、それに文人画のぼかしをおいたというようなものだった。それができあがったときには、さすがの伊右衛門も苦笑して言葉がなかった。ことに六曲の左端に葭の茂った水があってそこに一羽の水禽が飛んでいるのだが、その鳥の正体がどうしても分らない。羽色は鶺鴒とも見えるし、脚の長いところは鷭のようでもあり、嘴は宛然として鷺に類する……久馬は少年の頃、伊兵衛とともにこの屏風を見るたびにそれを指さしては笑ったものであった。
「ああ、なつかしい屏風ですね」
「……なんでございますの」
「この屏風です。そっちの端にいる鳥がなんだか分らないので、伊兵衛とよく冗談を云ったものですよ」
佐和も思いだしたように、手をそっと唇に当てながら笑った。
「そうでございました。