Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけのつじ
夜明けの辻
山本 周五郎
Lesen Sie 夜明けの辻 (よあけのつじ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.801 Zeichen · 86 Bildschirme
あの若さも、美しさも、清純さも、そのまま少しも変らずに遺っているんだ。
未練ではないと彼は信じていた。男が一生にただ一人の妻として選ぶべき女、その他にはどんな女も自分の妻ではあり得ない。そういう女に対する男の本当の愛だと信じていた。
彼は同志六人とともに、山県大弐を鬼鉾山の権現堂に追い詰めたが、四人を討止められ、自らも傷ついた。そのとき彼は、
――ここが死に場所だ。
と覚悟すると同時に、
佐和がすぐ近くにいる。
という心の叫びを聞いた。
土井勇次郎、山口藤吉の二人と、傷ついた身をここへ遁れて来たのは、むろんそのためだけではない、どこまでも大弐を刺そうと思ったからである。しかし、その心の片隅に、佐和を見て死のうという気持がなかったと断言することはできなかった。
大弐が国老の屋敷にいると聞くや、山口、土井の二人は矢も楯も耐らず出て行ったが、彼は高腿の刺傷が烈しく痛んで起てず、空しくここに残っている。ここに残って佐和の介抱を受けている。
――ああ。
と思わず久馬は呻声をあげた。
「どうなさいまして?……痛みますの」
「いや」
久馬は傷よりも烈しい胸の苦痛に、強く眉を寄せながら首を振った。