Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 264.133 Zeichen · 524 Bildschirme
お銀様はその子供の泣き声が気になって仕方がありません。
穴切明神を後ろにして武家屋敷の方へ向って行きますと、そこで絶え入るような子供の泣き声が足許から聞えるのでありました。
「おや、棄児か知ら」
お銀様は、まさに近い所の路傍の闇に子供が一人、地面へ抛り出されて泣いているのを認めました。
「かわいそうに棄児……」
お銀様はその子供の傍へ駈け寄りました。棄児としてもこれはあまり慈悲のない棄児でありました。籠へ入れてあるでもなければ、玩具一つ持たせておくでもありません。裸体にしないだけがお情けで、ただ道の傍へ抛り出されたままの棄児でありました。
「おお、こんなことをしておけば凍死んでしまう、なんという無慈悲なこと、なんという情けない親」
お銀様は直ぐにその子を抱き上げました。咽び入るようなこの子は抱き上げられて、いじらしくもお銀様の胸へぴったりと面を寄せて、その乳を求めながら、欷歔くっているのであります。
「お乳が無くて悪かったね、いい坊やだから泣いてはいけません」
ようやくかたことを言えるくらいの男の子。お銀様はその子を固く抱いて頬ずりをしました。
その時に、お銀様の鼻に触れたのは紛として腥さい、いやないやな臭いであります。