Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 264.133 Zeichen · 524 Bildschirme
やや上ってまた下りました。その二つは戯れているのではなく、食い合っているのでありました。
非常に恐ろしい形相をして雌蝶と雄蝶が噛み合いながら室内を、上になり下になって狂い廻るのでありました。
「ああ、幸内がかわいそう……」
とお銀様が慄え上るその頭髪の上で、二つの蝶が食い合っていました。竜之助には、いよいよ判然とその蝶が透通るように見えるのであります。蝶の噛み合う歯の音まで歴々と聞えるのであります。
「ああ、幸内がここへ来た」
お銀様は、雌蝶とも雄蝶とも言わない。竜之助は幸内の姿を見ているのではありません。
この二つの蝶は夜もすがら、この座敷牢の中を狂って狂い廻りました。竜之助はこの蝶のために一夜を眠ることができませんでした。お銀様はこの蝶ならぬ幸内の幻のために一夜を眠ることができませんでした。
夜が明けた時にお銀様は、そう言いました。
「ああ、あなたはお眼が見えない、お眼が見えないから、わたしは嬉しい」
竜之助とお銀様との縁は悪縁であるか、善縁であるか、ただし悪魔の戯れであるかは、わかりません。
けれども、甲府のあたりの町の人にはこれが幸いでありました。