Japanische Klassiker mit Furigana
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こうじょうさいぼう
工場細胞
小林 多喜二
Lesen Sie 工場細胞 (こうじょうさいぼう) von 小林 多喜二 (こばやしたきじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.234 Zeichen · 184 Bildschirme
次の日は「理髪」だった。――俺はこうして、此処へ来てから一つ一つ人並みになって行った。――こゝの床屋さんは赤い着物を着ている。
顔のちっとも写らない壊れた小さい鏡の置いてある窓際に坐ると、それでも首にハンカチをまいて、白いエプロンをかけてくれる。この「赤い」床屋さんは瘤の多いグル/\頭の、太い眉をした元船員の男だった。三年食っていると云った。出たくないかときくと、なアに長い欧州航路を上陸をせずに、そのまゝ二三度繰りかえしていると思えば何んでもない、と云って笑った。
「アパアト住い」と云い、又この「欧州航路」と云い、こゝにいるどの赤い着物も、そんなことを自分の家にいるよりも何んでもなく云ってのける。
用意が出来ると、この床屋さんが後に廻りながら、
「バリカンで、ジョキ/\やってしまうぜ。」
と云った。
それは分っていて……しかし云われてみると、矢張りギョッとした。
「頼む! 少しは長くしておいてくれよ。」
「こゝン中にいて、一体誰に見せるんだ。」
と云って、クッ、クッと笑った。
「そうか、そうか、分った。面会に来る女があるんだろうからな――」
それで俺の髪だけは助った。