Japanische Klassiker mit Furigana
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こうじょうさいぼう
工場細胞
小林 多喜二
Lesen Sie 工場細胞 (こうじょうさいぼう) von 小林 多喜二 (こばやしたきじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.234 Zeichen · 184 Bildschirme
若い男と女は離れた暗がりに蹲んでいた。団扇だけが白く、ヒラ/\動くのが見えた。森本はそのなかを、挨拶をしながら表通りへ抜けた。――この町は「工場」へ出ている人達、「港」へ出ている人達、「日雇」の人達と、それ/″\何処かに別々な気持をもって住んでいる。
この一帯はY市の端ずれになっていた。端ずれは端ずれでも、Y市であることには違いなかった。然しこのT町の人達は、用事で市の中央に出掛けて行くのに、「Yへ行ってくる」と云った。何か離れた田舎からでも出掛けて行くように。乗合自動車も、円タクも、人力車もT町迄だと、市外と同じ「割増し」をとった。――こゝは暗くて、ジメ/\していて、臭くて、煤けていた。労働者の街だった。つぶれた羊羹のような長屋が、足場の据らないジュク/\した湿地に、床を埋めている。
森本は暗いところを選んで歩いた。角を曲がる時だけ立ち止った。場所はワザと賑かな、明るい通りに面した家にされていた。裏がそこの入口だった。彼は決められていたように、二度その家の前を往復してみて、裏口へまわった。戸を開けると、鼻ッ先きに勾配の急な階段がせまった。彼は爪先きで探って――階段の刻みを一つ一つ登った。