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Japanische Klassiker mit Furigana

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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

Lesen Sie 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 337.181 Zeichen · 676 Bildschirme

Aozora Bunko

その姿も、復讐を一念にしている人とは受けとれなかった。離散と共に移って来たこの借家にしろ、家庭の整い方や、安兵衛の妻の幸女の顔の明るさや――どこにも、暗いとか悲壮とかいう影はないのだった。郡兵衛は、

(はて? ……)

と、惑わずにいられなかった。

まだ、妻というものを知らない郡兵衛なのである。やがて、安兵衛が挨拶に出て、奥の部屋で、お幸の手から、小袖を着せ掛けられたり、旅の持物の細々とした心づかいを受け取っているのを見ると、何か、軽い羨望にとらわれて、自分の生涯を、心で独りさびしんだ。

『お待たせした』

四、五日の留守を云いおいて、安兵衛は、新しい草鞋を足につけた。笠を持って、お幸は、戸外へまわる。弥兵衛も、門まで見送って――

『道中薬は持ったか』

『矢立は』

と、細やかな心づかいが、この父娘の日頃の家庭を偲ばせる。

郡兵衛は、その日の旅に、妙に、人妻が眼についてならなかった。又、街道から覗かれる百姓の家や、商い屋や、さまざまな階級の家庭が、妙に眼についた、そしてその家毎の団欒を思ってみたり、人生を考えたり、又自分にかえってみたりして、言葉かず少なく歩いた。