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Japanische Klassiker mit Furigana

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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

Lesen Sie 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 337.181 Zeichen · 676 Bildschirme

Aozora Bunko

『幸っ。……幸っ……』

大きな声で云って振顧った。――と、すぐ次の小部屋の襖の下で、お幸のすすり泣きの声が聞えていたのである。弥兵衛老人は、もう履物の上に片脚を下ろしていたが、

『ば! ばかっ! ……。安兵衛にその声を聞かせたら、愛想をつかされるぞよ。――いや其方より、この舅が気まりが悪いわえ』

条右衛門は先へ廻って、老人の足もとを気づかいながら、

『叔父上、お履物は、それでよろしゅうございますか』

『む。……支度は万端、杉野の宅でいたす』

軒下を出て、老人はふと空を見上げていた。大川を漕ぎ下る夜船の櫓音が泣くように軋んでゆく。

『――お幸、言伝けはないか。――ないか、安兵衛に』

それには答えないで、お幸の声が窓から云った。

『御機嫌ようお出まし遊ばしませ。……後の事は、幸がおりますから、お心置きなく』

『ウム、ウム……安兵衛にもその通り云うてやろう。ではおまえ達も、機嫌よく暮らせよ』

雪はかたく氷っていた。ざく、ざく、と三人の踏みしめて行く跫音が暫く聞えていた。何かつい其処ら辺りまで用達に出て行くような老人であった。――お幸も彼の老妻も、その人が二度と帰って来ない約束で出て行く人とは、何うしても思われなかった。