Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
彼は立ち上って石橋の上から去ろうとした、が、十歩ほど行くと後へ戻って橋の上の字を草履で消した。そしてもう一度書いてみたけれどもやはり消した。後はぶらぶら歩き出すと急に走り出した。走り出ると反(そ)り返(かえ)って白墨を高く頭の上へ投げて踏(ふ)み潰(つぶ)した。そしてまたぶらぶら五、六歩あるくと走り出した。
村へは入った処で染物屋(そめものや)があった。米はそこの雨垂落(あまだれおち)に溜っている美しい砂を見ると蹲(しゃが)み込(こ)んでそれを両手で掬(すく)ってはばらばら落してみた。終(つ)いには両足を投げ出した。そして、大きな砂粒をかき去(の)けると人差指でオカサンハ、と書いた。もう昨夜の事は夢だとは思えなかった。急に母を擲(なぐ)りつけたくなった。その時彼は砂の中に透明な桃色をしたゴマの砂粒を見付けた、彼はそれを手の平で拭(ふ)いてよく眺めていると何か貴い石にちがいないと思った。
「金剛石(ダイヤモンド)や!」
フと彼はそう思うとほんとうの金剛石のような気がした。するといよいよ金剛石だと思われた。彼はそれをすかして見てからもとあった砂の上へ置いてみた。