Japanische Klassiker mit Furigana
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れもん
檸檬・ある心の風景 他二十編
Lesen Sie 檸檬・ある心の風景 他二十編 (れもん) von Kajii Motojirō (梶井 基次郎) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.934 Zeichen · 263 Bildschirme
と、その顔は、なにか極まり悪気な貌に変わってゆきました。
「なんでもないんです」
澄んだ声でした。そして微笑がその口のあたりに漾いました。
私とK君とが口を利いたのは、こんなふうな奇異な事件がそのはじまりでした。そして私達はその夜から親しい間柄になったのです。
しばらくして私達は再び私の腰かけていた漁船のともへ返りました。そして、
「ほんとうにいったい何をしていたんです」
というようなことから、K君はぼつぼつそのことを説き明かしてくれました。でも、はじめの間はなにか躊躇していたようですけれど。
K君は自分の影を見ていた、と申しました。そしてそれは阿片のごときものだ、と申しました。
あなたにもそれが突飛でありましょうように、それは私にも実に突飛でした。
夜光虫が美しく光る海を前にして、K君はその不思議な謂われをぼちぼち話してくれました。
影ほど不思議なものはないとK君は言いました。君もやってみれば、必ず経験するだろう。影をじーっと視凝めておると、そのなかにだんだん生物の相があらわれて来る。ほかでもない自分自身の姿なのだが。それは電燈の光線のようなものでは駄目だ。