Japanische Klassiker mit Furigana
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すさのおのみこと
素戔嗚尊
Lesen Sie 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.917 Zeichen · 86 Bildschirme
七
彼はこの寂しさに悩まされると、しばしば山腹に枝を張った、高い柏の梢に上って、遥か目の下の谷間の景色にぼんやりと眺め入る事があった。谷間にはいつも彼の部落が、天の安河の河原に近く、碁石のように点々と茅葺き屋根を並べていた。どうかするとまたその屋根の上には、火食の煙が幾すじもかすかに立ち昇っている様も見えた。彼は太い柏の枝へ馬乗りに跨がりながら、長い間その部落の空を渡って来る風に吹かれていた。風は柏の小枝を揺って、折々枝頭の若芽のを日の光の中に煽り立てた。が、彼にはその風が、彼の耳元を流れる度に、こう云う言葉を細々と囁いて行くように思われた。
「素戔嗚よ。お前は何を探しているのだ。お前の探しているものは、この山の上にもなければ、あの部落の中にもないではないか。おれと一しょに来い。おれと一しょに来い。お前は何をためらっているのだ。素戔嗚よ。……」
七
しかし素戔嗚は風と一しょに、さまよって歩こうとは思わなかった。では何が孤独な彼を高天原の国に繋いでいたか。――彼は自らそう尋ねると、必ず恥かしさに顔が赤くなった。それはこの容貌の醜い若者にも、私かに彼が愛している部落の娘がいたからであった。