Japanische Klassiker mit Furigana
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すさのおのみこと
素戔嗚尊
Lesen Sie 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.917 Zeichen · 86 Bildschirme
三十三
が、彼の眼の下には、今までにない一筋の皺が、いつの間にか一年間の悲しみの痕を刻んでいた。
三十三
それ以来彼はたった一人、ある時は海を渡り、ある時はまた山を越えて、いろいろな国をさまよって歩いた。しかしどの国のどの部落も、未嘗て彼の足を止めさせるには足らなかった。それらは皆名こそ変っていたが、そこに住んでいる民の心は、高天原の国と同じ事であった。彼は――高天原の国に未練のなかった彼は、それらの民に一臂の労を借してやった事はあっても、それらの民の一人となって、老いようと思った事は一度もなかった。「素戔嗚よ。お前は何を探しているのだ。おれと一しょに来い。おれと一しょに来い。……」
彼は風が囁くままに、あの湖を後にしてから、ちょうど満七年の間、はてしない漂泊を続けて来た。そうしてその七年目の夏、彼は出雲の簸の川を遡って行く、一艘の独木舟の帆の下に、蘆の深い両岸を眺めている、退屈な彼自身を見出したのであった。
蘆の向うには一面に、高い松の木が茂っていた。この松の枝が、むらむらと、互に鬩ぎ合った上には、夏霞に煙っている、陰鬱な山々の頂があった。そうしてそのまた山々の空には、時々鷺が両三羽、眩く翼を閃かせながら、斜に渡って行く影が見えた。