Japanische Klassiker mit Furigana
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すさのおのみこと
素戔嗚尊
Lesen Sie 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.917 Zeichen · 86 Bildschirme
二十四
実際眼に見えるものは、足もとに重なる岩だけであった。そのほかは一面に暗い霧が、山や谷を封じていた。霧の中では風雨の音か、それとも谷川の水の音か、凄じくざっと遠近に煮えくり返る音があった。が、彼の心の中には、それよりもさらに凄じく、寂しい怒が荒れ狂っていた。
二十四
やがて足もとの岩は、湿った苔になった。苔はまた間もなく、深い羊歯の茂みになった。それから丈の高い熊笹に、――いつの間にか素戔嗚は、山の中腹を埋めている森林の中へはいったのであった。
森林は容易に尽きなかった。風雨も依然として止まなかった。空には樅や栂の枝が、暗い霧を払いながら、悩ましい悲鳴を挙げていた。彼は熊笹を押し分けて、遮二無二その中を下って行った。熊笹は彼の頭を埋めて、絶えず濡れた葉を飛ばせていた。まるで森全体が、彼の行手を遮るべく、生きて動いているようであった。
彼は休みなく進み続けた。彼の心の内には相不変鬱勃として怒が燃え上っていた。が、それにも関らず、この荒れ模様の森林には、何か狂暴な喜びを眼ざまさせる力があるらしかった。彼は草木や蔦蘿を腕一ぱいに掻きのけながら、時々大きな声を出して、吼って行く風雨に答えたりした。