Japanische Klassiker mit Furigana
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すさのおのみこと
素戔嗚尊
Lesen Sie 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.917 Zeichen · 86 Bildschirme
二十八
殊にあの十六人の女たちは、いずれも死穢を隠すために、巧な紅粉を装っている、屍骨のような心もちさえした。彼はそこで山々の前に、思わず深い息をつくと、悄然と頭を低れながら、洞穴の前に懸っている藤蔓の橋を渡ろうとした。
が、その時賑かな笑い声が、静な谷間に谺しながら、活き活きと彼の耳にはいった。彼は我知らず足を止めて、声のする方を振り返った。と、洞穴の前に通っている、細い岨路の向うから、十五人の妹をつれた、昨日よりも美しい大気都姫が、眼早く彼の姿を見つけて、眩い絹の裳を飜しながら、こちらへ急いで来る所であった。
「素戔嗚尊。素戔嗚尊。」
彼等は小鳥の囀るように、口々に彼を呼びかけた。その声はほとんど宿命的に、折角橋を渡りかけた素戔嗚の心を蕩漾させた。彼は彼自身の腑甲斐なさに驚きながら、いつか顔中に笑を浮べて、彼等の近づくのを待ちうけていた。
二十八
それ以来素戔嗚は、この春のような洞穴の中に、十六人の女たちと放縦な生活を送るようになった。
一月ばかりは、瞬く暇に過ぎた。
彼は毎日酒を飮んだり、谷川の魚を釣ったりして暮らした。谷川の上流には瀑があって、そのまた瀑のあたりには年中桃の花が開いていた。