Japanische Klassiker mit Furigana
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すさのおのみこと
素戔嗚尊
Lesen Sie 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.917 Zeichen · 86 Bildschirme
「嘘をつけ。」
彼は一生懸命に、乱暴な返事を抛りつけた。が、その嘘でない事は、誰よりもよく彼自身が承知していそうな気もちがしていた。
「あら、嘘なんぞつくものですか。ほんとうに助けてやる心算でしたわ。」
彼女がこう彼をたしなめると、面白そうに彼の当惑を見守っていた二人の女たちも、一度に小鳥のごとくしゃべり出した。
「ほんとうですわ。」
「どうして嘘だと御思い?」
「あなたばかり鳩が可愛いのじゃございません。」
彼はしばらく返答も忘れて、まるで巣を壊された蜜蜂のごとく、三方から彼の耳を襲って来る女たちの声に驚嘆していた。が、やがて勇気を振い起すと、胸に組んでいた腕を解いて、今にも彼等を片っ端から薙倒しそうな擬勢を示しながら、雷のように怒鳴りつけた。
「うるさい。嘘でなければ、早く向うへ行け。行かないと、――」
女たちはさすがに驚いたらしく、慌てて彼の側を飛びのいた。が、すぐにまた声を立てて笑いながら、ちょうど足もとに咲いていた嫁菜の花を摘み取っては、一斉に彼へ抛りつけた。薄紫の嫁菜の花は所嫌わず紛々と、素戔嗚尊の体に降りかかった。彼はこのの好い雨を浴びたまま、呆気にとられて立ちすくんでいた。