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Japanische Klassiker mit Furigana

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すさのおのみこと

素戔嗚尊

芥川 竜之介

Lesen Sie 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.917 Zeichen · 86 Bildschirme

Aozora Bunko

」

「嘘をつけ。これはおれが――」

「あの娘に」と云う言葉が、何故か素戔嗚の舌を硬ばらせた。彼は相手の蒼ざめた顔に熱い息を吹きかけながら、もう一度唸るような声を出した。

「嘘をつけ。」

「離さないか。貴様こそ、――ああ、喉が絞まる。――あれほど離すと云った癖に、貴様こそ嘘をつく奴だ。」

「証拠があるか、証拠が。」

すると若者はまだ必死に、もがきながら、

「あいつに聞いて見るが好い。」と、吐き出すような、一言を洩らした。「あいつ」があの牛飼いの若者であると云う事は、怒り狂った素戔嗚にさえ、問うまでもなく明かであった。

「よし。じゃ、あいつに聞いて見よう。」

素戔嗚は言下に意を決すると、いきなり相手を引っ立てながら、あの牛飼いの若者がたった一人住んでいる、そこを余り離れていない小家の方へ歩き出した。その途中も時々相手は、襟にかかった素戔嗚の手を一生懸命に振り離そうとした。しかし彼の手は相不変、鉄のようにしっかり相手を捉えて、打っても、叩いても離れなかった。

空には依然として、春の月があった。往来にも藪木の花のが、やはりうす甘く立ち罩めていた。が、素戔嗚の心の中には、まるで大暴風雨の天のように、渦巻く疑惑の雲を裂いて、憤怒と嫉妬との稲妻が、絶え間なく閃き飛んでいた。