Japanische Klassiker mit Furigana
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すさのおのみこと
素戔嗚尊
Lesen Sie 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.917 Zeichen · 86 Bildschirme
犬は全身まっ黒な、犢ほどもある牡であった。彼等は、殊に大気都姫は、人間のようにこの犬を可愛がった。彼も始は彼等と一しょに、盤の魚や獣の肉を投げてやる事を嫌わなかった。あるいはまた酒後の戯れに、相撲をとる事も度々あった。犬は時々前足を飛ばせて、酔い痴れた彼を投げ倒した。彼等はその度に手を叩いて、賑かに笑い興じながら、意気地のない彼を嘲り合った。
ところが犬は一日毎に、益々彼等に愛されて行った。大気都姫はとうとう食事の度に、彼と同じ盤や瓶を、犬の前にも並べるようになった。彼は苦い顔をして、一度は犬を逐い払おうとした。が、彼女はいつになく、美しい眼の色を変えて、彼の我儘を咎め立てた。その怒を犯してまでも、犬を成敗しようと云う勇気は、すでに彼には失われていた。彼はそこで犬と共に、肉を食ったり酒を飲んだりした。犬は彼の不快を知っているように、いつも盤を舐め廻しながら、彼の方へ牙を剥いて見せた。
しかしその間は、まだ好かった。ある朝彼は女たちに遅れて、例の通り瀑を浴びに行った。季節は夏に近かったが、そのあたりの桃は相不変、谷間の霧の中に開いていた。彼は熊笹を押し分けながら、桃の落花を湛えている、すぐ下の瀑壺へ下りようとした。