Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
――話がちと飛躍するが、この山田美妙著の平清盛を、私の亡父が、愛読していた記憶がある。
長年の病床にいた私の父は、美妙斎の平清盛を読んで、「……清盛にもそんな時代があったのかなあ。そんな人間だったのかしら」と、しきりに読後感をもらしていたそうだが、それから七日ほど後、突然、病勢が変って亡くなったのである。
その数日前も、亡くなる前の夜までも、私は悪友と悪所を遊び歩いたりしていた。だから後では慚愧にたえなかった。おまけに、母の話によると、父は亡くなる数日前に、「いったい、英次というやつは、あんなふうで、今にどうして食べて行けるだろう」――沁々それだけが心がかりらしく、母にいっていたというのである。
つい、つまらないことを書いてしまったが、こんな往年の慚愧も、私が、「新・平家物語」の起稿を胸にもった目に見えない契機の一つにはなっていたかも知れない。「この書を亡父に捧ぐ」というような白々しいことはいえないが、ぽっちりそんな凡情が今、わかないでもない。そして私は、いつか亡父の歿年をも過ぎた年ごろになっている。
父の袷いつしかをかしからず我れ
思えばよく社会から食べさせて貰って来、またなおこんな著業にかかったものと自嘲される。