Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
「こちらへ」と、また神職にみちびかれて、岩々たる巌根を踏み、那智の滝の、真下に立つ。
腹に力がはいる。ふわとしていると、持ってゆかれそうな瀑風が気流のように渦まいている。ぼくらの立ったその日の条件もよかったのである。雨後の空から太陽が滝の薄衣を透して、うしろの巨大な岩壁へ、照明を局射しているように、水沫の光焔を描いているのだった。いや、さらに二条三条の小さい虹が、滝を斜めに、まつわっている。那智百三十メートルの全姿を、美の女神と見るなら、虹は腰衣から垂れている五彩の紐が風に吹かれているようである。「描きたい」と、杉本氏、うめく。
「いまに描く。取っ組まなければ。とても……とても」彼のごとき若い芸術家をして、こういう意欲を燃え立たしめる何かを、那智はたしかにもっている。「生命をかけて来い」那智はいっているようでもあった。と、ぼくが傍らで空想したのは、この下に、「新・平家」のうちに描いた文覚の姿を置いていたからでもある。文覚石というのがある。滝の真下から離れて、また一段、奔流の落下をなしている所なのだ。よく絵にある文覚荒行の図などは、空想すぎるもので、何ものもこの大瀑布の直下には身をおけたものではない。