Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
先へ」「さあ?」「どこか、道がないかなあ。いい道が」こんなに道に払底した日もない。車が小型で僥倖だった。大阪市東淀川区江口町と、地図では一目瞭然だが、京阪間にもまだこんなローラーの懸け残しみたいな田舎があったのかと、まごつくのである。もちろん田園風景といえるようなものではなく、工場と田ン圃と、農家と石炭殻の山と、住宅地と鮒もいなくなった水溜りと――といったような生活図の変化に富む中を、やたらに出会う子供たちの群れに怪しまれながら、それでも、とにかくやっと探しあてたのが、目的の普賢院寂光寺。俗に、江口の君堂といっている遊女古蹟であった。
せまい道路を、曲がりくねって、淀川堤の横へ、やっと、車が這いあがる。
堤の上に立つ。すると、吹田の駅が、まっすぐ北の方に望まれた。国道も立派に通っているし、なんのことはない、わざわざ迷って来たようなもの。
けれど、迷い、まごつくことは、旅情を深めるには必須な条件かもしれない。その点、砕花風人の労を多として、淀川堤から脚下を見ると、ほんとに、いい物が眺められた。蕭々と冬空の下にそよいでいる枯れ蘆の浮き洲であった。そして大阪市街も瓦斯タンクも煙突も少しも気にならないほど灰色の視界に遠く隔てている満々たる川幅であった。