Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
その水面と蘆の洲にはまた眼を刺す一物もなく、河心あたりに魚か水鳥がチラと白いものをかすめたきりであった。
あんな田舎が大阪の中に残っていたのも意外だが、こんな静かな、足利水墨画の中に立ったような残景がここにあるのも意外であった。もし数艘の小舟に、唐風の飾り傘をささせて、それに江口の君たちを乗せ、そこの蘆むらから漕ぎ出させても、不自然に見えない程だ。
煙草を指に、川にむかって、何べんもライターをする。ぼくの幻想は楽しい。平安朝史の上では、宮廷の秘めごとは源氏物語の陰翳のうちにささやかれ、庶民の中の花柳紅燈は、江口の里が、代表している。
その江口は、ここか。鳥飼はもすこし先、蟹島(今の加島)は、あそこ、神崎はいま通って来た横の川。
鳥飼の院には、宇多天皇と遊女白女との佳話があるし、神崎には、藤原道長の子頼通と遊女中君との情話がある。小野宮の大臣と二条関白とが、ひとりの遊女香爐を挟んでの恋争いやら何やらを、史書に漁ると限りがない。「栄花物語」「更級日記」「大和物語」「東鑑(吾妻鏡)」等々々。大江匡房には「遊女記」の著述さえある。
いったい、日本の歴史には、じつに、庶民史料がないし、また、女性が隠れている。