Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
でなければ、希望しているのか。もう、ふたたびは、暗くしてはならないとしているあの地上。生命の確証。美しい、しかし、何かまだ怯えをとりきれていない夜空の眩さにも見える。ぼくの旅人的な感傷のせいだろうか。
左を、ふり向く。
音戸ノ瀬戸の船路の近道が切り開かれなかった前は、月詣りの清盛も、幾多の都人も、厳島の大外を迂回して来たので、船はみなそこの湾へ着けたという多々羅の浜の白い汀が、松をすかして、夜目のかなたに、見下ろされる。
健吉さんは、清盛塚の小さな石の塔を、めぐり歩いては、頭のうちにスケッチする。
小さな松、中くらいな松、大きな松、すべて潮風を友として、こういう山に這いかがんだり、仰向いたり、舞うかのように立っている木は、どれ一つといえ、ここの自然に、なくてならない木の姿になっている。その遠方此方を、嘉治さん、Oさん、社長さん、悟空子、権宮司さんなど、影ちりぢりに、佇んだり、腰かけたり、うそぶいたり、しばらくはただ海潮音と松風の暗い中に、黙りあっているだけのこと。
恨みは長し――とは、よくいう史家の嘆声だが、今となっては、平家の亡びかたには、恨みなどは何もない。