Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
旅館の老女将や女中さんなど、呼ばれたり、走って行ったり、どうも妙である。
健吉さん、のっそり降りてきて、「どうしたの」と、中広間をのぞく。ぼくも入ってゆく。
みな返辞をしない。春海さん、憮然と、廊下にたたずみ、嘉治さん、腕グミして、卓の向うに坐っている。高山君は、どてらの裾を引きずりながら、「はてな。おかしいですな。アイロンをかけに持って行ったかしら。それにしては?」などと、部屋の隅を宝探しみたいな恰好で、何やらしきりに、屈み歩いている。掻きまわしている。
結局。――泥棒が入ったと気がついたのは約十五分間ぐらい後である。なにもそんなに、考えなくても、分かるはずだが、分からないものである。よもや、とどうしても、思ってしまう。
「ははあ、やられましたなあ」春海さんの如きは、もっとも、カンが遅い。そのくせ、廊下に点々と残っていた泥棒の土足のあとを、自分で踏んづけているのである。
「踏み消してはいけませんよ。高山君、そこらも、余りいじって何か動かさない方がいいですよ」と、嘉治さん注意する。旅館の電話で、たちどころに、警察の人々が、前後して、やって来る。
部長、警部補、鑑識課、刑事諸君など、驚くべき人数が、たちまち部屋いっぱいになってしまった。