Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
物々しい現場検察と、被害者訊問が始まる。「これは、えらいことになった」とぼくも思い出した。
けれど、どういうものか、ぼくにはちっとも、切実感がわいて来ない。もっとも、ぼくと健吉さんだけは階上に寝たため、持物洋服なども、そっくり二階に残っていた。してやられたのは、階下の三人全部である。「トランク。トランクもありません」「洋服もですな」「あ。紙入れも」「ぼくのボストンバッグも」「これは手際がいい。ほとんど、全部です」責任感のつよい高山君は、刑事、鑑識課の諸君も措いて、今なお、眼を皿に、宝探しをつづけている。悪いけれど、笑うまいと思うけれど、おかしくて仕方がない。ひとごとというものは、ひどいものだ。こうも冷淡になれるものかと、ぼくは自分のクツクツ笑いを憎んでみるが、なんともこれは一場の喜劇であった。
泥棒は、裏口から入ったらしい。窓の竹格子が、見事に切られているという。裏庭に、脱糞があったとも報ぜられた。また、ボストンバッグの中の林檎を取り出し、ゆうゆうと、食って行ったらしく、りんごの皮が捨ててあった。ヤスリ、小さい釘抜き、ネジまわしなど、三ツ道具入りのサックも置き忘れてあり、それから洋服類は、全部風呂敷包みとなし、ただ一点、春海さん所有のもっともヤツれたるズボン一着だけは、値が踏めないためか、泥棒も敬遠して