Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
と科学的な気象統計を玉葉から引いて傍証としている。
古典、あながち史書ではない。竹取物語はあれであの説話によって生きている。ただぼくの「新・平家」の上ではまさか“水鳥の羽音”でお茶は濁せないと思っただけのことである。それでこの富士川合戦のやま――ではなくかわは――書くにも越えやすくない課題と前々から頭痛にしていた。新しい一章を平家や盛衰記に書き足すのとおなじである。自己の創作によるしかない。
富士川ばかりでなく、何か創意を立てるばあい、とにかく困るのは、庶民史の乏しさだ。絶無といってもいいだろう。日本歴史に欠けたものは何かと訊かれれば、女性史と庶民史と答える。
最近でも、太平洋戦争に関する記録物とか現代史的な出版は、ずいぶんあったが、陸海空の戦史、外交史、政界史などのいわゆる舞台正面だけが歴史の全部のごとく思惟された著述ばかりで、まだ、おたがい無数の小生命が飢えおののいて来た“めし茶碗の中の戦史”というものは一書も出ていない。
史観に立つと、そして、動乱を過ぎると、動乱の中の庶民生態史なんてものはくだらなく思えるのかしら。ぼく自身が「新・平家」を書くにあたって不便と痛惜を感じるのでいうわけではないが、戦時戦後のあの生々しい庶民生態は、重要なきのうの歴史ではないかと思う。