Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.575 Zeichen · 424 Bildschirme
いくさやみぬ藪鶯も啼き出でよ
戦後の山村でこんな句を呟いた年の春から書き出して、「新・平家」も足かけ五年めの春になった。その年生まれた二女の香屋子は「新・平家」とおない年である。時々、香屋子の成長には驚きの眼をみはるが、自分の仕事には不満ばかりが顧みられる。香屋子の健康ぶりを見るように自分の作品にも満足ができたらと思うが、一回一回活字になったのを後から見、いつも何か、これでいいと満足したためしがない。作家とは、人間の子の母以上、生みの子の育ちへ貪欲を持つものだ、そして盲愛にはなれない母である。
西国落ちの平家中で、いちばん可憐な存在は、建礼門院と安徳天皇、母子だと思う。
平家の人々は、あらまし、妻子や局たちも連れていたから、可憐な母子は、帝だけではないが、帝と御母とは、それらの多くの母子像中のシンボルとして、ひとしお可憐なのである。
その安徳天皇も、都落ちの時がお六ツであり壇ノ浦の入水はお八ツであった。「劇」だの「語り物」だの「古典」の文章だと、その子役的なおいとけなさは、従来の観念にあるようなあどけなさと、建礼門院に抱かれているあの稚児像ですまされるが、現代文のリアルな描写になると、自然、ただの人間の子供がそこに浮き出して来ないわけにゆかなくなる。