Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆきぐにのはる
雪国の春
柳田 国男
Lesen Sie 雪国の春 (ゆきぐにのはる) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 136.000 Zeichen · 266 Bildschirme
起きて出て見ると、右手に茂った山があって、盛んにミンミンの声がする。それほど陸近く汽船は入り込んできたのである。越喜来の湾だと乗客の若い水兵が教えてくれた。
目の細い頬の紅いふとった青年である。朝の暗いうちから一人かたかたと、堅い靴で甲板を歩いていたのはこの先生に違いない。船員は皆草履かはだし、他のお客さまはことごとく酔って臥していたから。しかもこの船に強い海の人までがこんなことをいう。水害さえなけりゃ汽車でくるのだった。釜石から山を越えてたった六里だ。汽車が不通だというから塩竈を廻ったら、まだるッこくて仕方がないと。実際今日は天候のために、もう六時間以上も遅れているのだ。
水兵の親たちは湾口に近い崎浜という部落に住んでいる。今日は旧暦の七日盆だ。餅でもつくだろうと思う家が南向きの沢に、一軒も残らず顔を出している。もちろん彼の家の屋根も見えるはずである。また見えているらしい顔付もしている。今度で二度目の休暇だそうである。もう帰ったも同じだ、嬉しいだろうと言うと、さらにその目を細くして笑った。
わしらは他の者に比べるとだいぶ損です。慰労と合わせて十七日の休暇だが、往復に五日近くつぶれますという。