Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆきぐにのはる
雪国の春
柳田 国男
Lesen Sie 雪国の春 (ゆきぐにのはる) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 136.000 Zeichen · 266 Bildschirme
身は沈み琵琶と磨臼は、浮いて流れてしがらみに引っかかる。そこで今でも琵琶に磨臼のたとえあり、「といひてはらり」と語ったと記している。
その翌々日は鈴木氏の家を出て、徳岡の村上家へ行こうとした。道案内は一人の少年であった。雪解の路にあるき疲れて、草原に腰をかけて休んでいると、兎が飛び出して走って行った。これを見て童児が次のような話をした。昔兎に行き逢うて田螺が一首の歌をかけた。
朝日さすこうかの山の柴かぢり耳が長くてをかしかりけり
これを聴いて兎の返歌、
やぶ下のちり/\河のごみかぶり尻がよぢれてをかしかりけり
こんな歌を子供が記憶するのは、いうまでもなくボサマの教育であった。それよりもおかしいのは奥の草野の彼岸の日の日影に、路にうずくまって兎と田螺の話を、笑って聞こうとした彼の心持である。真澄この時は三十五歳、長い旅刀をおび、頭巾をかぶっていたと想像せられる。天明八年といえば江戸でも京都でも、種々の学問と高尚なる風流とが、競い進んでいた新文化の世であった。しかるにそれとは没交渉に、遠く奥州北上川の片岸を、こんな寂しい旅人が一人あるいていたのである。
(昭和三年一月十六日記)