Japanische Klassiker mit Furigana
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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
Lesen Sie 青べか物語 (あおべかものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.961 Zeichen · 317 Bildschirme
本当に病気だったこともあり、誰からともなく噂が耳にはいると、ようすをみにゆきたい、という抑えがたい衝動に駆られたものだ。しかし彼は、自分の中にある自分以上に強いなにかの力によって、そういう激しい衝動をきりぬけることができた。
「それでもたった一度だけ、側へよって口をきいたことがあるだよ」幸山船長は舵輪に凭れかかり、そっと頬笑んでいるような調子で続けた、「あれはそうさな、うちのおっかあが死ぬちょっとめえだっけかな、あのこが子供を伴れて、徳行からおらの船へ乗っただ、伴れているのは四つくれえの女の子で、おらあその子を抱いて渡り板を船まで渡してやっただ、あのこはあとから渡って、子供を抱き取りながら、すみませんねえって云った、おらも云っただ、いまでも覚えてるだが、今日はいいお日なみですねってよ」
幸山船長は口をつぐみ、岸の松林のほうをじっと見まもっていた。
「すみませんねえ」と船長は呟き声で繰返した、「――今日はいいお日なみですね」
彼が四十二の年に、彼女は死んだ。
それを知ったのは、六十日の余もあとのことであった。そのくらい姿を見せないことは幾たびもあったので、彼はかくべつ心配もしなかった。