Japanische Klassiker mit Furigana
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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
Lesen Sie 青べか物語 (あおべかものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.961 Zeichen · 317 Bildschirme
そして、彼女が六十日以上もまえに病死したと聞いたとき、ちょっと云いようのない感動に包まれた。悲しいことは紛れもなく悲しかった。この世では二度と逢えないと思うと、舵輪を握る気力もなくなり、五日だか七日だか休んで家にこもっていた。けれども、悲しさや絶望感の中に、一種ほっとしたような、うれしいような気分がうまれていた。
「どう云ったらいいか」と幸山船長は凭れている舵輪を指で撫で、暫く口ごもっていてから云った、「――そうさな、あのこは死んでおらのとけへ戻って来た、っていうふうな気持だな、長えこと人に貸しといたものが返って来た、そんな気持だっけだ、おらそれから、人形箱の埃を払っただよ」
彼女は嫁にゆくが、心はその人形にこめてあると云った。彼はいまこそそれが現実になった、というように感じられたのだ。
彼は妻に死なれてから、ずっと独身でとおしたが、もはや独りではなく、彼女が彼といっしょであった。子供たちの眼があるので、口や動作には決してあらわさないが、心の中ではいつも互いに話しあっていた。
――今日は竪川で伝馬が詰っちまってな、高橋まで五時間もかかっちまっただよ。