Japanische Klassiker mit Furigana
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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
Lesen Sie 青べか物語 (あおべかものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.961 Zeichen · 317 Bildschirme
六時二十分になって、司会者が演壇へあがった。足場が不安定なので、テーブルの前まで、いかにも危なそうなさぐり足で歩いた。
「へっぴり腰だぞ……」と誰かが呼びかけた、「おっかあを……んじゃあるめえし、しっかり腰を伸ばしてええべや」
高くて広い浴場の空間が、ばかげた哄笑でわれ返るような反響を起こした。
その司会者が誰であったか記憶がない、彼は馴れない役目のためにあがってしまい、顔は蒼く、テーブルにつかまってふるえているのが、私のところからもよく認められた。それで聴衆はすっかりうれしくなり、次から次と嘲笑やおひゃらかしの声がかかった。子供たちまでが面白がって、「……ちゃんこよ、そんなにおっかながるなえ」とか、「おっかあはいねえからしんぺえすんな」などと喚きだした。
全聴衆がそんなふうだったわけではない。もちろんこれが町の死活問題に関する大演説大会だということを、しんけんに考えている者も少なくなかったので、制止の声や、司会者を励ます声も聞えだした。すると突然、聴衆の中から一人の若者が出て、すばやく演壇へとびあがった。年は二十六七だったろう、古びた印半纏の下にパンツをはいているだけで、壇上へあがるなり颯と両手を高くあげた。