Japanische Klassiker mit Furigana
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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
Lesen Sie 青べか物語 (あおべかものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.961 Zeichen · 317 Bildschirme
とまたお秀が云った、「ビールなんてもってえねえ、その燗ざましでたくさんだから、いいから飲ましてごらんよ、ばか踊りをやらしてみせるからさ」
客がなにか云った。その客が誰であったか、一人だったか伴れがいたか、私にはまったく記憶がない。私のところから見えなかったことは慥かであるが、どうも土地の者ではなく、よそから魚釣りに来た客だったように思う。
「さあ飲みな、留公」とお秀が云った、「がつがつするんじゃねえよ、みっともねえ、一杯だけだよ」
留さんがなにか云って、盃の酒を大事そうに啜るのが見えた。
「さあ、ばか踊りをやんな」とお秀は留さんの手から盃をひったくって云った、「うまく踊んなよ、そしたらまた飲ましてやっから、さあ踊るんだよ」
留さんは立ちあがり、手拭で頬かぶりをし、いかにもてれくさそうに笑いながら、やおら尻端折りをした。
――なんという女だ。
私は歯をくいしばりながらそう思った。留さんは踊りだした。てけて、どんどん、と自分で囃子を入れながら、――彦山夫人の言葉にもかかわらず、それは決して上手なものではなかった。尤も、私は里神楽で見たのと、新橋の幇間だった柳家連中の獅子舞で見たくらいの知識しかなかったが、――私は踊っている留さんから眼をそらし、いそいで勘定をして、逃げるように根戸川亭をとびだした。