Classiques japonais avec furigana
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
Lisez あらくれ de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 119 451 caractères · 236 écrans
「成功したら、一度山へ行ってあの人にも逢ってみたい」
そんな秘密の願が、気忙しい顧客まわりに歩いている時の彼女の心に、どうかすると、或異常な歓楽でも期待され得るように思い浮かんだりした。一つは、妾になら為ておこうといったことのある、その男への復讐心から来る興味もあったが、現在の自分等夫婦には、欠けているらしい或要求と歓楽とに憧るる心とが、それを彼女に想像させるのであった。
一旦田舎へ引込んで、そこで思わしいことがなくて、この頃また東京へ来て、日本橋の方の或洋酒問屋にいるとか聞いた鶴さんのことをも、時々彼女は考えた。植源のおゆうが、鶴さんの迹を追って、家を出たりなどして、あの古い植木屋の家にも、紛紜の絶えなかった一頃の事情は、お島もこの頃姉の口などから洩聞いたが、その鶴さんにも、いつか何処かで逢う機会があるような気がしていた。
それに鶴さんや浜屋と、はっきりその人は定っていないまでも、どこかに自分が真実に逢うことのできるような男が、小野田以外の周囲に、一人はあるような気がしないでもなかった。成功と活動とのみに飢え渇えているような荒いそして硬い彼女の心にも、そんな憧憬と不満とが、沁出さずにはいなかった。